「歯医者に行くのは歯が痛い時だけ!」の危険性
歯科医院ってなるべく行きたくない場所ですよね。
私もそう思います。
と言ってしまえば身も蓋もないので、言い直しますが、私もそう思っていました。
やっぱり、歯が痛いのって我慢できません。我慢して我慢して、寝れないほど痛くなって、諦めて
「やっぱり歯医者に行くしかないか。」
となりますね。普通。
初めて来院される方の半分はこれですが、しょうがないと思います。
誰だって、自分の時間や生活、仕事、そちらの方を優先します。
そして、その日常が脅かされる程に歯が痛くなれば、初めて歯医者の予約を入れようと決意します。
そうなると、早く行きたいですよね。「これが続くとヤバい!」「今日は予約とれるかな?」
で、歯医者に電話すると、「本日は予約が詰まってますので、えーっと、…来週のO曜日はご都合いかがですか?」
とか対応されたら、もう大変ですよね。
もう、その歯医者は敵でしかない。
「いや、ならいいです。」
中には即日対応の歯科医院を探しても見当たらずに、突然近くの歯医者に行く方も多いのではないでしょうか?
そして、突撃すると「すぐのご案内は難しいので、暫くお待ちいただいてもよいでしょうか?」と言われ、待たされます。
「なんで、直ぐに診てくれないのかな?こんなに痛いのに!!」
そうして我慢して待ってたのにいざ診てもらったら、
「いや、お待たせしましたね。、痛いのはここですか?あーかなり放置しましたね。」
とか、イヤミ言われたりして、「ええ。放置しましたよ。だから、痛いんですが、文句ありますか?」なんて言い返したくなりますよね。実際。患者さまは痛いことはまさに身に染みてますし、百も承知なのですから。
ただ、痛みを生じるにはやはりそこに至る過程というものがあります。
歯科医院サイドからは、放置が続いた状況下で痛くなっている歯があれば、やんわりと、もっと前に来れば痛くならなかったのに。と警鐘を鳴らしてる可能性もあります。
歯が痛い場合にそれが全てというわけではないのですが、主に虫歯や歯周病で痛みがある場合は事前に予防しておくことで、かなりの確率で「我慢できない痛み」は避けることが可能だからです。
また、「我慢できない痛み」になる可能性についてもある程度定期的に歯科医院に通って頂く事で予測が立ちます。
例えば自動車なら、故障して動かなくなってしまうと大変ですが、こまめに診てもらえばそんなことはないですよね。それに、自動車の場合は法定の車検があるので、動かなくなるような事態に突然見舞われることは少ないと思います。
自動車なら法定車検で強制的に定期検診があるのですが、歯科の場合は患者さま個人に定期健診の必要性が委ねられているためにそのような問題が起こってくるのではないかと思います。
目安ではありますが、半年に一回程度の継続的な歯科受診をされてある方にとっては恐らく無縁の話です。
ここで、歯科医院と患者さまの関係性について図説いたします。
大まかに解説いたしますと、真ん中の棒が患者さまの健康度です。それが下のほうにどんどん倒れると痛みや不調といった具体的な症状になってきます。
ただ、注意していただきたいのは患者さまの健康度を表す棒は日常生活を営んでいる以上、誰でも徐々に傾いていくという点です。不健康にしていたり、そのような習慣が有れば傾いていくスピードは上がります。
健康を妨げる要因としては、
・治療した部分の経年的劣化
・加齢的な機能の低下
・虫歯などの病的要因
・日常的メンテナンスの不足
・嗜好品などの変化
などが考えられます。具体的に解説していきます.
治療した部分の経年的劣化
銀歯や樹脂による詰め物などあらゆる虫歯の治療は、歯以外のもので歯の形を作っているので時間や使用度によってすり減ってきたり物性的な変化が出てきます。また、歯、そのものもすり減ったり欠けたりしますので治療した場所にも段差や穴が生じる事が有ります。それがひどくなると虫歯が発生しやすくなります。
加齢的な機能の低下
お身体には健康を維持するため、口腔内でも日々悪くならないように体そのものが機能しています。例えば唾液ならば虫歯になる環境を整える働きや細菌への抵抗などの働きが有りますが、年齢とともに作られる量は減ってきます。他には免疫機能なども年齢とともに低下していきますので、歯周病のリスクなども年齢とともに増加していくと考えられます。
虫歯などの病的要因
虫歯もある程度以上進行すると進行のスピードが速くなります。(エナメル質という歯のバリアに穴があくと内部の象牙質という部分では急速に歯が溶け始めます。)健康な歯の状態から虫歯になると、最初は冷たいものや甘いものがしみてくるようになりますが、さらに進行すると眠ってられない程の痛みになります。虫歯が進行を始めると治療しないと食い止める事は無理でしょう。
歯周病も自然に治る事は基本的に無いと考えてください。また、歯周病の場合はよほどひどくならないと痛みが出ない事が特徴の病気ですので、痛みが出るほどまで放置しておくといきなり抜歯が必要になってしまう可能性さえあります。
日常的メンテナンスの不足
虫歯や歯周病は日常的な口腔ケアによって進行を予防できるのですが、頑張って歯磨きしても虫歯になる事が有ります。歯ブラシだけで一生懸命磨いても歯垢の除去率は6割程度と言われています。つまり、一生懸命歯ブラシで磨いても残りの約4割の部分はずっと磨いていないのと一緒になります。ずっと磨いていないような部分は虫歯や、歯周病の温床になりますので、頑張って歯ブラシで磨いていても、経時的に悪くなる部分は必ず出て来ると思います。
嗜好品などの変化
人それぞれに好みがあるように食べ物にも歯にとって良い悪いはあります。酸性の食べ物や飲み物は虫歯のリスクや歯をすり減らすリスクにつながりますし、単純に甘いものが好きな人は虫歯のリスクが高くなります。極端に硬いものが好きな方は奥歯にかかる負担も増加すると思われますし、そのような方は奥歯の寿命が普通の人に比べると短くなる可能性も高まります。
これら、日常的に生活をしていても、虫歯や歯周病になるリスクは何もしないでいると徐々に高くなってきます。
また、体調や病的な状態などもこれらのリスクを更に高めます。よく知られたところでは、妊婦さんなどは嗜好の変化による虫歯リスクが高まったり、嘔吐などからくる胃酸による虫歯リスク、ホルモンバランスの変化による歯周病のリスクなどが有ります。
様々な原因で歯の健康状態も崩れてしまった時に、直接的な「歯の痛み」として感じてしまうこととなるのです。
健康な状態に戻す力としては、
・継続的なメンテナンス
・日常的な口腔ケア・知識
・病的な部位の治療(機能回復)
・適切な食事の環境
・健康増進への生活面の配慮
などが考えられますが、歯科医院以外で可能なものも存在しますし、実際に生じてしまった「歯の痛み」等には直接的に歯科医院でアプローチしていくことになります。ここについても具体的に説明していきたいと思います。
継続的なメンテナンス
ここで言うメンテナンスとは主に歯科医院で行うメンテナンスになります。ただ、メンテナンスと言っても歯石取りや歯のクリーニングに限らず、初期虫歯の治療や虫歯予防もメンテナンスになります。ここで重要なのはそれを継続的に実施するという事で、「痛み」や「機能不全」に対しての経過観察を継続的に行うことで「いつもと違うな」と歯科医院の方が発見しやすくするためです。
日常的な口腔ケア・知識
歯周病の治療に重要なのは、歯科医院の治療、予防と患者さまの日常での口腔ケアです。ただ、誤った口腔ケアをしていても、決して良くはならないし、「なんで治療しているのに悪くなるんだ!」と思われかねません。ですので、正しい知識を身に着けたうえでの口腔ケアでなければ役に立たないと思います。正しい口腔ケアについてはかかりつけの歯科医院の衛生士さんが主に患者さまにお伝することになると思いますが、普段のブラッシングでケアできていない部分をまず知っていただき、そのような部分のケアの方法を知っていただく事が正しいケアの知識になると思われます。
病的な部位の治療(機能回復)
主に歯科医院で実施する作業にはなりますが、歯の場合は歯の形を作っていくことになります。なぜそういう言い方をするかというと、皮膚や骨などの器官と違い歯というものは大きく欠けたり削ったりしたものは自然と回復する事が出来ないからです。歯に穴が空いたら空いたままですし、割れてしまったり折れた歯が自然に治る事は有りません。虫歯などで失われた歯そのものの機能回復は人工物で補うしかありません。
このような治療の事を歯科では補綴修復(ほてつしゅうふく)と言います。
歯周病の治療ならば、炎症などにより歯を支える組織が破壊されていく状況を改善していくことが治療になります。例えば歯石がついている歯は周囲の歯茎などを破壊していくので、まずはそれを取り除いていく事が具体的な治療法になります。また、著しく歯の破壊が進行してしまっている場合は治療によって、噛める状況を作っていく事で機能の回復を図っていきます。
適切な食事への環境
日常的に歯の健康を妨げるような原因は食べ物にも深くかかわってきます。例えば砂糖を多く含んでいる食べ物を好んで食べる場合はもちろん虫歯になりやすいですし、もし同じ量の砂糖を含んだ食べ物でもだらだら長時間にわたり食べ続けると、更に虫歯になってくる確率は上がってしまいます。
反対に野菜などの繊維質を多く含むものは食べる際に歯そのものを掃除する効果が有ったり、チーズ等の乳製品も歯を強くする働きがあります。
飲み物では日本茶などが殺菌効果もあり、フッ素なども含まれているので歯だけでなく口腔内環境の改善にも役に立ちます。
よく知られたとこではリカルデントガムも歯の再石灰化を促進し、軽度の虫歯を治す働きがあります。
健康増進への生活面の配慮
知らないうちについやっている習慣が歯などへの病気を促進する行動もあります。
例えば、子供なら指しゃぶりが歯並びを悪くしてしまう事などは小さなお子様をお抱えの方ならご存じだとは思いますが、成人でも悪習癖と言って歯そのものや、顎の関節、かみ合わせ等に影響を及ぼしてしまうような習慣も存在します。例えば、歯ぎしりや食いしばりなどが歯や関節に対して過度のストレスを与えてしまったり、アスリートの方々が歯に強度のストレスを与えるのでマウスピースなどで保護するような必要があることもご存知の方もおられるのではないでしょうか?その他にも、頬杖やうつぶせ寝、横を向いて寝る行為などが顎の関節にストレスを与えて痛みにつながってしまうようなこともあります。
そういった習慣を改善していくことで、歯などに対してのストレスを軽減させることも出来ますが、ひどくなってしまった場合は治療が必要な場合もあります。
まとめ
歯科医院との関りが薄くなれば歯などへの痛みが出現する可能性が高まる。
歯が痛くなったときは歯科医院での治療も増える。
という事で、歯の健康を保とうとする方ほど結構定期的に歯科医院には通ってらっしゃるのではないかと思います。要は患者さま自身が生活面でも歯科医院などでの知識を得て、なるべく健康な状態を保てるとよいのではないでしょうか?
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