虫歯の進み方について
虫歯に関しては、その進み具合によって治療の方法や出てくる症状が異なります。また、その定義もありますので、虫歯の治療を受けられる患者さまにとっては現状を理解して頂いた上でご受診をされると治療に対しての目安になるのではないかと思います。
歯科医院では虫歯の治療に入る前には、よく説明を受ける部分ではあると思いますが、大まかに進行すればするほどに治療の回数、時間もかかる事ですので、患者さまにはよく理解をしていただきたい部分でもあります。
ここでは、虫歯の進行具合による分類を解説していきたいと思います。
CO
CO(カリエス オブザベーション)
ごく初期の虫歯を言います。いわゆる虫歯のなりかけの状態です。歯を構造的に分類すると外側から順番にエナメル質、象牙質、歯髄(歯の神経があるところ)となります。COとはこの中で一番外側のエナメル質表層での虫歯の発生段階を指します。
カリエスとは虫歯の病名、オブザベーションとは観察と言う意味ですよね。従って観察期にある虫歯の事をこう言います。なぜ、虫歯であるのに観察するかというと予防やケアによっては虫歯の進行を防ぐことが出来る状態だからです。
つまりは、COは基本的に虫歯を削る必要性のない状態を言います。また、痛みも有りませんので患者さま本人には分かりにくい状態です。具体的な症状は歯の表面のツヤが失われて白色や黄色っぽい色に変色したりしています。
虫歯になったところを歯医者さんが削るのは、虫歯の進行を防ぐために削るのであって、回復不可能な状態の歯を取り除いていく行為なのです。従ってCOに対しての虫歯の治療は予防が中心になります。歯を削る必要は有りません。何らかの原因で虫歯になりかけている状態を虫歯にならないように予防の治療をしたり、歯磨きの指導をしたりする事で不可逆的な虫歯の進行を防いでいくようにします。
C1
歯の表面のエナメル質が虫歯になってしまった状態です。エナメル質という部分は虫歯の予防に非常に重要で、歯という組織から虫歯を守ってくれるバリアのような存在です。従ってエナメル質の虫歯も痛みなどは基本的に感じない状態が多いです。具体的には歯が黒っぽく変色してしまい、わずかに陥没してしまっているような状態です。奥歯の歯の溝や、歯と歯の接している部分で発生しやすく、レントゲンにも写りにくい状態ですが、発生してしまうと虫歯による歯の崩壊が進行してしまうため、進行予防の為に歯を削っていくこととなります。基本的な治療は歯の削ってしまった部分を樹脂で詰めて埋めたり、小さな金属で補ったりしますが、大半はレジンという樹脂による治療が中心になりますので、基本的に治療の回数も少なくて済みます。
C2
歯の表面のエナメル質を超えて、更に深い層の象牙質まで虫歯が進行してしまった状態です。象牙質はエナメル質に比べて、虫歯に対しての抵抗が少ない組織ですので、さらに虫歯が進行していくスピードが上がります。また、C2になるとある程度進行した時点で「冷たいもの等がしみる」といった症状が出てきます。具体的には「冷たいものを食べたら、歯が瞬間的に痛くなる。」といったような症状ですが、症状が多く出るほど、また痛みが強いほど虫歯が神経に近づいてしまっている状態ですので、放置すればするほど痛みが増してくる可能性が出てきます。また、こうなってしまうと自然に虫歯が治癒する可能性は有りませんので早期発見と早期治療が必要な状態です。
見た目には歯に穴が開いていたり、虫歯の部分が黒くなっていたりしますが、象牙質は虫歯が広がりやすいので、見た目には小さな穴でも、歯の中では大きく広がってしまっていることがほとんどです。治療は樹脂による治療が出来るものもありますが、インレーと言って部分的な金属などでの治療の必要性が出てくる可能性が高くなります。その場合は型取りとインレーの装着にそれぞれ治療が必要になりますので、1か所の治療でも最低2回以上は通院が必要になります。
また、進行性の虫歯でなくても知覚過敏などで水や歯磨きがしみることもあるので、そのような症状が出た場合は歯科医院で診てもらう必要があります。
C3
歯の構造の最深部の歯髄という部分に虫歯が到達してしまった状態です。
この状態になると、大抵は我慢できないほどの強い痛みに襲われるようになります。具体的には眠っていられないようなズキズキした強い歯の痛みが出てきます。また、歯だけでなく頭や歯の周囲の激しい痛みを伴います。何かの刺激を受けると強い痛みに数分間は我慢できずにうずくまってしまうような感じです。「出来れば歯医者にかかりたくない。」と思われる方の大半はこの痛みのために歯科医院を訪れるきっかけになる事が多いのではないでしょうか?
あまりにも強い痛みのためにどの歯が痛みの原因であるかは患者様ご自身でも分からなくなることも多いです。歯科医院側からは結構ある事ですが、例えば上の奥歯が痛い!と感じていても実際の原因は下の奥歯であったりすることも多いです。
痛みの原因は歯の中心にある歯髄という組織が炎症症状を持つことで起こります。歯髄というものは歯の神経や血管などが通っておりますが、虫歯が歯髄まで進むと容易に神経を刺激してしまいます。また、神経自体は刺激などによって炎症を起こしながらじわじわ死んでいくので激しい痛みが出ます。痛み自体は数日で少なくなっていくのですが、その間はかなり強烈な痛みの為に多くの方は歯科医院を訪れることになります。
たいていの場合見た目には歯に大きな穴が開いていたりしていますが、銀歯の内部で虫歯が発生していたり、外側のエナメル質があまり崩れていない場合は分かりにくい時もあります。ですが、レントゲンでは虫歯は映るので進行しているかしていないかは定期的にチェックを受けましょう。
C4
虫歯がさらに進んでしまい、歯の根の部分以外は崩壊してしまったような状態です。
このような状態になってしまうと歯の中にある神経組織などは細菌の感染により、壊死してしまいます。そして細菌の感染は歯を囲む骨の内部まで進行してしまい膿のたまりを骨の中に作ってしまいます。
この状態になると歯の神経は死んでしまっているので余り痛みを感じる事はありません。ですが、骨の中では細菌感染が持続的に起こっていますので健康上は良い状態ではありません。
歯自体は虫歯の進行が歯全体に及ぶために通常歯を残しておく事は困難になります。いわゆる、抜歯が必要になります。
また、例えば一度神経を取り除く治療を受けてしまった歯も痛みは感じませんが、もし虫歯が進行してしまうとC4の状態になってしまう可能性があるために、そのような歯が有る場合には定期的なレントゲンなどによる検診を受けていないと危険な可能性もあります。
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