虫歯が発生する原因は何か?
虫歯とは言葉としてはよく聞きますが、実際「虫歯」とはそもそもどういう状態を指すのでしょうか?
通常「虫歯」とは歯に黒い穴があいたような状態です。なぜ穴が空いてしまうかというと、虫歯の原因菌が歯に穴をあけてしまうからです。
では、虫歯の原因菌はどのようにして歯に穴を空けるかというと、虫歯の原因菌が砂糖などの糖分を代謝して、乳酸を生成して、その酸が歯を溶かしてしまうからなのです。
簡単に言ってしまうとそれが原因なのですが、もう少し掘り下げていくと、原因は細分化されます。また、それぞれの原因を知り、それぞれに予防すれば、虫歯の予防はもっと効果が上がるのではないでしょうか?
虫歯の原因4要素
虫歯は4大原因が重なって発生する。
•虫歯の要因は、①歯の質 ②食餌的な要因(砂糖) ③原因菌 があり、この三つがそろった際に虫歯が発生する。 アメリカのKeyesという研究者が虫歯の要因としてこの三つを提唱し、後にNewbrunという研究者が4つ目の要因として、「時間」という要因を付け加えた。
•虫歯が発生するには ①歯の質 ②砂糖類 ③細菌 ④時間 の要因が全て重なる事が条件になる。
言い換えますと、この説では、原因が単体、もしくは二つ、三つ、でも虫歯の発生には至らないという事になります。ですので、それぞれの原因が一体どのようなものかを理解していただくと、虫歯発生のメカニズムがご理解いただけると思います。
虫歯の原因①歯質とは?
歯質とは言い換えますと、歯の質的問題。正確には宿主の問題を指します。宿主とは細菌が宿るものを指します。つまり細菌が生活しやすい環境の状態を指しております。ここで言う細菌は主に虫歯の原因菌(ミュータンス菌を中心とした細菌群)を指します。
人間の体も宿主ですから、広くとらえると歯だけではなく体の問題も関係してきます。体について考えるとそれぞれの個人が持っている抵抗力、免疫の質的な物も関係しますし、虫歯の事を考慮すると主に口腔内での免疫の中心は唾液が担うことになりますので、その生産量の個人差も関係します。
歯、そのものについて考えると、虫歯になりやすい歯なのかそうでないのか。生まれつき歯の形は遺伝的な物が多くを決定しますので、例えば歯の表面のエナメル質の厚さは厚いほど虫歯になりにくいなどの差が出てきます。遺伝的にエナメル質形成不全症などの疾患は虫歯リスクが高まることが知られています。
•歯質とは、歯そのものの虫歯への抵抗力が重要ですが、体の備えている抵抗力も関係してきます。
•歯そのものはフッ素などを歯に応用することで、歯を虫歯になりにくくすることができます。
•個人差が有りますが、産出される唾液などの量でも、多ければ多いほど虫歯にはなりにくくなります。
虫歯の原因②細菌とは?
細菌とは 、前述のとおり、主に虫歯の原因菌(ミュータンス菌を中心とした細菌群)を指します。細菌は歯の表面に住んでいる数が多ければ多いほど虫歯リスクが上がりますので、単純に菌の数を減らすことが虫歯の発生を予防することに繋がります。虫歯の菌は歯の表面で勝手に増殖していきそのコロニーになっているものが歯垢(プラーク)と呼ばれるものです。プラークの菌数は大便に匹敵するほどグラム当たりの菌の数は多いので、常に細菌にさらされていると考えてもらって差し支えありません。完全に虫歯菌を消滅させることはまず不可能ですので、どうすれば増やさないかを考えると一番大事なのは物理的に歯の菌を減らすブラッシングが大事だという事になってきます。
ブラッシングが重要なのは皆様はご存知だと思うのですが、重要なのは単に磨いていても普通に歯ブラシだけでは磨けない部分が出てきてしまうことが問題です。
一般的に歯ブラシだけでのプラーク除去率は頑張って60%程と言われており、歯間ブラシやデンタルフロス等の併用で80%ほどのプラーク除去が達成できると言われています。その残りは常に存在するプラークですので、そこは磨いていないのと同じという事になります。つまりいかに上手に歯ブラシをしても100%のプラーク除去は不可能という事になります。
磨くことができない部分とは、奥歯の裏の歯の境目だったり、治療を受けた部分とかは必ず生じてしまうマイクロギャップと言われる小さな段差だったり、歯と歯の隙間に生じてしまった小さな虫歯だったり、いろいろ考えられますが、より細かくブラッシングを実施することでかなりの虫歯発生を防げますので、80%のプラーク除去を目指してブラッシングをする事が一番重要であると思われます。
•細菌とは、主にミュータンス菌などの歯を溶かしてしまう性質のある虫歯の原因菌を指します。
•一番は菌の数を物理的に減らすことで、こまめなブラッシングや磨きにくい部分への掃除、歯科医院でのクリーニング、菌の溜まりやすい部分の治療などがあります。
•また、虫歯の原因菌は歯のない赤ちゃんにはいません。歯が生えたての赤ちゃんに、歯がある人間からの虫歯菌の感染により虫歯の菌がたくさん移るので、特に虫歯のある人間からの食べ物の移動などは、赤ちゃんへの虫歯リスクを早期に高めてしまいます。
虫歯の原因③糖分とは?
人類が砂糖という合成物に出会わなければ、実は虫歯の心配をする事は有りません。人類が砂糖に出会わなかった太古の時代には恐らく人類が虫歯に悩むという事はほぼなかったと思われます。虫歯は人類が文明の発展により勝手に作り出してしまった病気であると思われます。昔から虫歯の原因菌はいたと思われますが、特異的にそれらの菌が虫歯の発生を促すようにするのは主に砂糖類が原因です。虫歯の原因菌は細胞内の酵素の働きでショ糖を乳酸に変える働きを持っています。乳酸は歯を溶かし、ここから虫歯の発生が起きてしまいます。
たとえ砂糖を使わないように気を使っていても、人間の使用する調味料には砂糖類が当然のように使用されておりますので、食事の際には砂糖類を避けることはかなり困難だと思われます。
また、虫歯の予防に役に立つと言われているキシリトールについてですが、キシリトールは虫歯菌が分解して乳酸を作る事が出来ない物質です。ですが甘みは十分あり、砂糖に比べてきりっとした感じで甘みを感じる後味が少ない物質です。特に毒性はないのですが、下剤としての働きが有り大量にとるのは良くないとされています。また、キシリトールが虫歯菌に働くとその活動性が抑制されるので、砂糖と併用しても虫歯菌の働きを抑える効果が有ると言われています。このように有益な甘味料なのですが、砂糖よりも高額なため砂糖の代わりに使用することは困難です。また、北欧諸国では発明研究の拠点であることもあり、結構使用されているようです。
•糖分とは、主にショ糖(砂糖)を中心とした糖類の事を指します。虫歯の原因菌のエサになるような糖類を指します。
•虫歯の原因菌は砂糖をエサにして酸を生み出して、その酸で歯が溶けていき、虫歯が出来てしまいます。
•キシリトールは糖類ですが、虫歯の原因菌のエサにはなりません。虫歯の原因菌にとってはキシリトールは偽物のエサなので酸を作ることは出来なくなります。
•キシリトールの大量摂取はおなかをこわすことが有るので注意が必要です。
虫歯の原因④時間とは?
時間という要因については当然ながら、虫歯の原因が重なると直ちに虫歯が発生するというわけでなく、それなりに虫歯が発生する条件が揃ってもそれを防ぐ働きもあるという事を提言しているのです。確かに虫歯が発生する条件が出来てしまってもそれが不可逆的な進行に至るのには時間が関係してきます。それと重要なことは不可逆的な虫歯の進行になってしまうのはエナメル質という歯のバリアを超えた虫歯がその進行を食い止めることが困難になってしまうという事です。
実はエナメル質という歯の表面では虫歯にならないようにミクロレベルでの歯の再生を繰り返しています。しかしながら虫歯の発生条件がミクロレベルでの歯の再生に追い付かなくなる程持続的になってしまうと、初めてエナメル質表面で物理的な歯の崩壊現象が発生していきます。
ここでは歯の石灰化という事がキーワードになってくるのですが、目で見てすぐにわかる現象ではないので、多くの方は虫歯になった時点でしか虫歯の状態がわかりません。また、我々専門家でも、虫歯を視覚的に判断することでしか虫歯の発生を確認しにくいので虫歯のなりかけ状態を診断できても、予防したり積極的に虫歯にならないよう取り組んでいく事はご自宅や日常の取り組みが大変重要になってきます。
後述しますが、時間と虫歯の発生に関してはもう少し掘り下げて説明をしていきます。
•時間とは、 Keyesの3大原因(歯質、細菌、糖分)が揃ってもすぐに虫歯になる訳ではなく、経時的結果として虫歯が発生することをNewbrunが唱えたのです。
•虫歯が出来てしまう前に、歯の表面では唾液などが虫歯を回復させる作用(再石灰化)があります。しかし、回復させる時間的な余裕がなく継続的に虫歯を作る環境が揃うと、初めて歯に穴が開き始めてしまうのです。
•虫歯が出来てしまう力と虫歯を守る力のバランスが崩れた状況で時間が経過してしまうと虫歯になってしまうのです。
虫歯の原因4時間について
時間と虫歯発生のメカニズムについては上の図説のように虫歯の発生条件が悪化した際に歯が溶けだしていく事で起こります。
糖分を摂取した直後では歯が溶けだしていく状態が主に虫歯菌の力で働くのですが、エナメル質表面では表層化脱灰と言って、その形を保ったままで歯からのミネラルの流出が起こってきます。このままミネラルを回復させる働きが主に唾液によって起こってくるのですが、持続的にミネラルの流出が続いてしまうと歯の表面はもろくなってしまい物理的な崩壊が発生します。唾液はリンやカルシウムといった歯の支えになるミネラルが含まれるため、歯の表面で脱灰が起こってもしばらくすれば歯は勝手に回復していきます。
回復に追いつかない状況とは、完全にミクロレベルで回復が完了していないのに更に歯が溶けだす環境を与えてしまったり、唾液が不十分な状況であったり、と色々有るのですが、主にはだらだら食べたり、食後にすぐデザートなどをとったり、間髪入れずに甘いものを摂取したり甘いものを飲み続けたりなどが考えられます。
ミクロレベルでの歯の崩壊現象が持続してしまうと結果として虫歯の発生につながってしまいますので時間的な要素とは歯にも回復の機会を与え続けることが虫歯の予防につながります。
まとめ
•虫歯が発生する為には条件がある。
•時間、糖分、歯質、細菌のどれかの要素を無くすと虫歯にはならない。
•それぞれの要素別に予防することで、虫歯を防ぐことができる!
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