日本での虫歯の現状
日本国内では過去から現在において、お子様が虫歯になってしまっている歯の数は年々減少しています。これを客観視しているのがDMF指数(虫歯や治療を受けたもしくは喪失した歯の本数)と言って厚生労働省の実態調査では、ここ30年ほどでも、明らかに虫歯になっている歯は減少しています。
1~14歳のDMF指数推移
(厚生労働省平成28年度歯科疾患実態調査より抜粋)
永久歯のDMF指数推移
上の図も下の図も徐々に数値が減少しています。不思議に思われた方もいると思いますが、上の図では3歳から11歳までは虫歯の数が増えます。これは乳歯の虫歯がカウントされるからで、下の図のように永久歯のみのDMF指数は2016年の調査で、12~14歳で1以下です。
実際問題としては乳歯の方が永久歯に比較して、DMF指数が増えていますので乳歯の方が虫歯にはなりやすいということを指し示しています。
これは、子育てをされてある皆様のデンタルIQが高まってきた事と、歯科医院での虫歯予防などにも効果がある。ということを指し示しています。そのうちお子様に虫歯が無いのはほぼ当たり前という可能性も出てきます。実際にDMF指数が2016年の時点で1以下、ということは現在「中学生の虫歯の数が平均1本以下になっている。」と言うことですので、かなり当たり前になってきているということなのです。
ですので、虫歯予防に対しての歯科医院での取り組みに対しては確実性はあると言えると思われますので、歯科医院での虫歯予防の取り組みについて解説していきたいと思います。
定期検診、フッ素塗布
お子様の虫歯予防の取り組みで一番重要なのは定期検診です。人間は乳歯と永久歯がありますが、全部で20本ある乳歯はだいたい小学校のうちにすべて抜け落ちてしまい永久歯に生え替わります。つまり、生まれてから12,3歳までの間に劇的にお口の中の環境は変化していきます。小学生では、ほぼ毎年何処かの乳歯が抜けて新しい永久歯が出てくるという状態です。
お子様の歯並びに関しては、生えてくる場所や歯が生えてくるスペースの有り無しが全体的な歯並びを決定します。また、乳歯に虫歯があって、歯の形を維持できていないと永久歯の生えてくる場所が不足してしまうような場合もあります。
親から見て歯並びがおかしい!と思われてもそれは成長上、普通に起こることもあります。
そのように激変する口腔内の状況を定期的に見ていくことで、歯並びの確認、虫歯の予防と早期発見、早期治療につながっていきます。
虫歯に関してなのですが、定期的なフッ素塗布が虫歯になりにくい歯を作っていきます。この、フッ素なのですが、歯に作用することで歯の構造を変化する作用があります。フッ素によって変化した歯の構造は、酸によって溶けにくくなり結果的に虫歯にもなりにくく変化するのです。
そして、実はこのフッ素による歯の変化を一番起こしやすいのが、永久歯も乳歯も歯が出てきてすぐの状態なのです。ですので、フッ素による虫歯予防効果を最大限高めるならば萌出直後のフッ素塗布は非常に効果的なのです。
激変する口腔内では毎年「出てきてすぐの状態の歯」が存在するために歯科医院で、継続的に虫歯予防の管理を受けていただくことが、虫歯の予防効果を最大化できると思います。
歯科医院でのフッ素塗布は濃度の高いものを口腔内に塗布するのが一般的ですが、毎日のフッ素ジェルの使用やフッ素洗口なども効果的です。
定期検診のメリット
それから、お子様が定期検診に来ていただくことの最大のメリットは、歯科医院に慣れてもらうと言うことにつきると思います。
これは私の医院でも、定期検診にご来院されるお子様はあまりいやな顔をしていないお子様が多いと実感しているからなのですが、中には遊びに来たのかい?と思われるようなお子様もいますのでそれは良いことだと思います。
なぜそれが良いかと言いますとお子様にとって、歯科医院が痛いことをする場所では無いと体験を通じて学ぶことが出来るからなのです。
実際、定期検診に来られてある患者様でも、虫歯が出来てしまうことはもちろんあります。ですが、実際の虫歯の治療の際には定期検診に来ている子供と来ていないお子様とでは全く異なる対応になります。
定期検診に来てあるお子様の虫歯治療は、実にスムーズに進む場合が多いのです。仮に「今日は、虫歯さんがいたから、この機械で虫歯さんをやっつけるよ。」と言って実際に虫歯を削っても、お子様自身が結構へっちゃらで進んでしまうことが多いのです。
歯科受診で親が絶対に言ってはいけないこと
先ほど、定期検診について触れましたが、虫歯になってしまったら、歯科医院でしかその治療は出来ませんし、放置すれば痛みも出てきます。
たまに親御さんが「虫歯になったら歯医者さんに怒られるよ!」とか、「虫歯の治療はとっても痛いんだよ!」とか、妙に歯医者を恐怖感であおるような事を言う方がおられますが、お子様にとっては「歯医者が怒るかどうか」とか、「虫歯になったら治療が痛い。」とかは全て親の価値観でしかありませんので、絶対に言うべきではありません。
それよりも、そのような体験をしてある親であればあるほど、そのような思いをお子様にさせないように、虫歯が出来る前からの、こまめな定期検診をさせるように心がけてください。お子様はそのような体験を通じて、おそらく成人になっても「歯科医院が痛いことをする場所では無い。」「歯の健康維持のために行こう。」と変わっていくと思います。それは、結果的に「歯で痛い思いをすることは無い。」事への実現になります。
虫歯の出来やすい部分とシーラント
乳歯も永久歯も虫歯の出来やすい部分があります。また、その成長過程で虫歯がよく出来るところには変化があります。
特に乳歯も永久歯も奥歯の虫歯予防がとっても大事です。そして、奥歯の歯の溝は形が複雑ですので、歯磨きをしても自然と虫歯が出来てしまいやすい部分です。そのような部分を虫歯が出来てしまう前に樹脂などで封鎖してしまう予防治療のことを、シーラントといいます。シーラントは主にすり減りやすい樹脂などで作られてあるために、だんだんすり減ったりとれてしまったりもしますが、フッ素が配合されてあるので、残っている間は歯を強くする作用があります。ですので、シーラントが取れてしまっても、歯自体の虫歯に対しての抵抗力は上がっていると言うことになります。
歯科医院では、永久歯や乳歯が歯茎から頭の部分が全体的に出てきたタイミングでこのシーラントをおすすめすることが多いです。そして、予防治療ですので、虫歯になってしまった後では遅いと言うことになります。虫歯になってしまう前にシーラントをしておく事で、結果的に歯の溝の虫歯を防ぐことにつながっていきます。
シーラントにより歯の溝に予防処置をした例
虫歯になりやすい部分(乳歯)
乳歯では特に奥歯での咬む面は虫歯になりやすいので、シーラントはとても有益な虫歯予防法になります。
永久歯も出てきてすぐは幼若永久歯といって、虫歯になりやすい状態です。6歳くらいから出てくる永久歯も、出てきてすぐにシーラントをすることをおすすめします。
まとめ
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子供の虫歯の数は減少している。
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虫歯になる前からの歯科医院での虫歯予防と定期検診が重要
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歯科医院ではフッ素塗布、シーラントなどの予防を実施している。
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